布基礎とベタ基礎の違いを比較解説!それぞれのメリットとデメリットも

これから住宅建築を考えているのであれば、基礎の知識も身に付けるとよいでしょう。基礎には布基礎とベタ基礎があり、どちらを選べばよいか迷っている方も多いではないでしょうか。

どちらの基礎がよいかは、コストだけでなく地域や建物の構造なども含めて判断する必要があります。今回の記事では布基礎とベタ基礎の違いや、メリット・デメリットなどを紹介していきます。

この記事でわかること

  • 布基礎は建物を点で支える工法で、コスト面で優位性があること
  • ベタ基礎は建物を面で支える工法で、耐震性や湿気対策に優れていること
  • 布基礎かベタ基礎、選ぶ基準は、費用面だけではなく地域や構造などを含めて判断する必要がある

布基礎とベタ基礎の違いや、メリット・デメリットを詳しく解説しています。これから住宅を建築している方はぜひ参考にしてください。

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注文住宅の構造・工法の種類について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

1.布基礎とは?

布基礎とは柱や壁などの住宅の主要構造の部分の下に、基礎を鉄筋コンクリートで作る工法です。下の図の青い部分が基礎にあたり、Tの字を逆にした形をした鉄筋コンクリートが、主要な構造部分に連続して設けられ住宅を支えます。

基礎以外の部分は土のうえに防水シートを引いて、コンクリートで埋めますが後述するベタ基礎ほど厚くありません。

布基礎

コンクリートの厚さは、ベタ基礎が15~16cmなのに対し、布基礎は5~6cm程度です。また布基礎は点で建物を支える構造であることから、次のようなメリット・デメリットがあります。

1-1.布基礎にするメリット

次の2点が、メリットとしてあげられます。

  • ベタ基礎よりも安価で工事できる
  • 部分的な強度が非常に強い

それぞれの内容を紹介していきます。

1-1-1.ベタ基礎よりも安価で工事できる

布基礎は鉄筋を使用する範囲が、壁や柱などの主要な基礎部分のみです。詳細は後ほど説明しますが、ベタ基礎の場合は全面に鉄筋を使います。基礎以外の部分のコンクリートも薄いため、コストを抑えられるでしょう。家づくりのコストを抑えたい方には、布基礎がおすすめです。

1-1-2.部分的な強度が非常に高い

布基礎は深く根入れをするため、縦に対する負荷が強いです。逆T字型の基礎で深いところから支えるため、揺れに対する抵抗力あがり部分的な強度を高められます。また布基礎は使用する部材が少ないため、基礎自体の重量もベタ基礎ほど重くありません。
そのため地盤への負荷が少なくなり、上下方向への強度に優れています。鉄骨部分に建物の荷重が集中しやすい鉄骨造りでは、布基礎の方が建築しやすいといえるでしょう。

1-2.布基礎にするデメリット

次の2点が、デメリットとしてあげられます。

  • 耐震性がベタ基礎より低い
  • 風通しが悪く湿気やシロアリの対策が必要

それぞれの内容について、紹介していきます。

1-2-1.耐震性がベタ基礎より低い

面で支えるベタ基礎に対し、布基礎は構造物を点で支えるような造りのため耐震性で劣ります。また基礎の安定性が地盤の強さに左右されることも、デメリットといえるでしょう。弱い地盤のうえに建ててしまうと、基礎が歪んでしまい、建物の傾きなどの要因になります。

建物の耐震性について知りたい際には、耐震等級を知っておきましょう。

  • 耐震等級1:まれに発生する大地震でも倒壊・崩壊しない
  • 耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の耐震性能
  • 耐震等級3:耐震等級1の1.25倍の耐震性能

数字が大きくなるほど耐震等級が高くなり、床や接合部の強度、基礎の強度が求められます。そのため、高い耐震等級を取得するには、布基礎では不十分なこともあります。

1-2-2.風通しが悪く湿気やシロアリの対策が必要

布基礎では床部分の地面がむき出しになっている場合も多く、湿気が床下にこもりやすくなります。湿気は木材の腐食やシロアリ被害の原因となるため、構造的に危険な状態に陥ってしまう可能性があります。

防湿用フィルムなどである程度湿気を防げますが、ベタ基礎に比べると湿気に対する耐性は低いといえるでしょう。

ここまで、布基礎のメリットとデメリットをご紹介しましたが、希望エリアでマイホームを実現するには、どちらが適切で、どんな予算感になるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
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2.ベタ基礎とは?

ベタ基礎とは布基礎と違って建物の立ち上がり部分だけでなく、地面に接する部分すべてに鉄筋コンクリートを使用して面で建物を支えます。

ベタ基礎

図の青色の部分が鉄筋コンクリートの基礎の部分になります。地面も厚いコンクリートで覆うため、耐震性に優れているだけでなく湿気にも強いことが特徴といえるでしょう。

2-1.ベタ基礎にするメリット

ベタ基礎には、次のようなメリットがあります。

  • 耐震性や強度が強い
  • 湿気やシロアリに強い

それぞれの内容について、見ていきましょう。

2-1-1.耐震性や強度が高い

ベタ基礎は基礎の立ち上がり部分と床面を一体化して、建物の荷重を面で受け止める構造です。そのため震災による建物の揺れや衝撃なども、分散できます。厚みのある鉄筋コンクリートで建物をしっかりと支えるため、耐震性や強度は布基礎よりも優れているといえるでしょう。

また、ベタ基礎では不同沈下がおきにくいというメリットもあります。不同沈下とは建物そのものの重みで地盤に対して圧力がかかり、水平ではなく一定方向に偏って沈下する現象です。

不同沈下がおきると建物が傾いてしまい、内外装に亀裂が入ったり、建具の開閉がしにくくなったりとさまざまな問題がおきます。

面で重みを分散させるベタ基礎では、圧力が1つの箇所に集中することを防ぐため、不同沈下がおきにくいこともベタ基礎のメリットです。

2-1-2.湿気やシロアリに強い

ベタ基礎では地面部分に防湿シートを敷いて、そのうえに厚みのある鉄筋コンクリートで覆います。そのため地面からの湿気をカットできるため、湿気やシロアリに強いです。

床から立ち上がり部分をコンクリートで覆うためシロアリだけでなく、ムカデのような害虫の侵入も防げるでしょう。

しかし、ベタ基礎でも、シロアリ被害を完全に防げるわけではありません。経年によるコンクリートの伸縮によっては、人の目では認識できないような隙間が発生することがあります。

シロアリは0.6mmの隙間があれば侵入できるといわれているため、被害にあってしまう可能性はあります。ベタ基礎だからといって安心するのではなく、シロアリ対策はしっかりと行うようにしましょう。

2-2.ベタ基礎にするデメリット

ベタ基礎のデメリットには、下記の2点です。

  • 費用が高い
  • 鉄筋の数が少ないともろくなる

それぞれの内容について、見ていきましょう。

2-1-1.費用が高い

布基礎に比べると、ベタ基礎は使用する鉄筋もコンクリートも量が多いため、費用は高くなります。1階の床面積が広ければ広いほど、基礎打設部分の面積が増え施工費も高くなるでしょう。また、ベタ基礎は鉄筋コンクリートを地面に打設するため、布基礎に比べると掘削量が多いです。

そのため残土の量が多くなり、処理するコストもかかります。しかし、一般的な戸建て住宅の広さである30坪程度であれば、そこまで大きな費用差は出ません。床面積が大きくなるほど、布基礎に比べると費用差が大きくなるでしょう。

2-1-2.鉄筋の数が少ないともろくなる

ベタ基礎は使用する鉄筋の数や、太さによって強度がかわります。ベタ基礎だからといって適切な量の鉄筋を使用していないと、期待している強度が実現できません。施工業者によっては、最低限の鉄筋しか利用していない場合もあります。

そのため同じベタ基礎といっても、施工業者による強度のバラつきがあります。ベタ基礎だから安心というわけではなく、実際の施工内容なども確認するようにしましょう。

布基礎とベタ基礎、それぞれのメリットとデメリットが分かってきましたね。

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3.布基礎・ベタ基礎の見分け方

住宅を長く快適に使うためにも、基礎の構造を理解しておくことは非常に重要です。しかし、建築の素人にとっては見た目だけで布基礎とベタ基礎を見極めるのは、難しいでしょう。

ここでは新築住宅・中古住宅それぞれの場合の見分け方について解説していきます。

3-1.新築住宅の場合確認法

新築住宅の場合の確認方法は、これから建物を建築するか、建物が完成しているかで確認方法が違います。これから建物を建築するのであれば、建築現場を確認するとよいでしょう。建築途中の建物の基礎がむき出しの状態をければ、わかる場合があります。

床下全体がコンクリートで覆われていればベタ基礎、地面部分がむき出しになっていれば布基礎の可能性が高いでしょう。

しかし、布基礎でも床下にコンクリートを敷き詰めることの多いため、見た目だけでは判断できません。簡単に確認する方法は建築現場に立てられる「建築計画のお知らせ」の看板を確認する方法です。

「建築計画のお知らせ」には基礎工法が明記されているため、簡単に確認できます。建物が完成してしまっていると、「建築計画のお知らせ」看板は撤去されており、確認できません。このような場合は販売している不動産会社、建設業者に確認するようにしましょう。

3-2.中古住宅の場合の確認法

中古住宅の場合の確認方法は、次の4つがあります。

  • 床下点検口から確認する
  • ホームインスペクションを利用する
  • 構造計算書を確認する
  • 土を掘ってみる

床下点検口をのぞいてみることで、確認できる場合があります。床下を見て、地面がむき出しの場合は布基礎です。しかし、布基礎でも床下にコンクリートを打設していることも、少なくありません。そのため床下がコンクリートの場合は、他の方法で確認する必要があるでしょう。

ホームインスペクションを行えば、基礎がわかります。ホームインスペクションとは住宅に詳しい専門家が、建物の劣化状況や改修箇所などを診断することです。

ホームインスペクションの調査項目には基礎に適切に鉄筋が入っているか、という項目があるため事前に知らせておけば布基礎がベタ基礎かを教えてもらえるでしょう。

また構造計算を実施した住宅であれば、構造計算書で基礎の仕様が確認できます。基礎に沿って土を掘って確認する方法もあります。25cmほど基礎に沿って掘り、基礎がL字型に出っ張っていれば布基礎です。布基礎は逆T字型の形をしているため、土を掘って地中の出っ張りで確認できるでしょう。

4.布基礎とベタ基礎はどっちがいい?

布基礎とベタ基礎には、それぞれ特徴があります。どちらもメリット・デメリットがあるため、どちらを選ぶか迷う方も多いでしょう。布基礎とベタ基礎を選ぶ際の、5つのポイントを紹介します。

  • 費用面は布基礎が安い
  • 工程や後期に差はない
  • 耐震性や強度はベタ基礎が強い
  • 湿気やシロアリ対策はベタ基礎が有利
  • 寒冷地であれば布基礎がおすすめ

それぞれのポイントについて、紹介していきます。

4-1.費用面は布基礎が安い

費用面での比較では、布基礎の方が安いでしょう。使用する鉄筋やコンクリートの量が違うため、コスト面での優位性は布基礎にあります。しかし、ベタ基礎の普及により施工会社がベタ基礎に慣れたことで、施工費だけではそこまで差がありません。

コストの目安としては1㎡あたり布基礎は9,000円~13,000円程度、ベタ基礎は10,000円~14,000円程度です。1㎡で1,000円しか差がないため、30坪の土地であれば約10万円しか差がありません。建物の大きさによってコスト差が出やすいため、見積などで確認するようにしましょう。

4-2.工程や工期には差はない

布基礎とベタ基礎では、施工の工程や工期に差はありません。おおまかな工程は、下記の通りです。

  1. 地盤調査
  2. 基礎の範囲を決める
  3. 掘削工事
  4. 砕石を入れる
  5. 防湿シートを敷く
  6. 捨てコンクリートを流す
  7. 鉄筋を組む
  8. コンクリートを流し込む
  9. 仕上げをして完成

4-3.耐震性や強度はベタ基礎が強い

ベタ基礎は、面で支えるため耐震性や強度は布基礎よりも優れています。しかし、布基礎であっても、耐震性を高められます。立ち上がり部分の底盤を広くしたり、地盤を強化したりすることで耐震性能を高められるでしょう。

また建物の構造によっては、ベタ基礎よりも布基礎の方が向いている場合もあります。建物の形状や階数なども含めて、総合的に判断しましょう。

4-4.湿気やシロアリ対策はベタ基礎が有利

ベタ基礎の方が湿気やシロアリには強いですが、だからといって対策が不要なわけではありません。経年劣化によって、シロアリや湿気の影響が出ることもあるでしょう。

ベタ基礎の場合は最低でも10年に1回、布基礎の場合は2~3年に1回は床下点検口からの確認が必要です。

4-5.寒冷地であれば布基礎がおすすめ

寒冷地では地中深くに基礎を設置する必要があるため、布基礎が向いている場合もあります。寒冷地では冬になって気温が下がると、地面が凍結して体積が膨張します。水に入ったペットボトルを凍らせると、膨張することを考えるとイメージしやすいでしょう。

凍結による膨張によって、建物の基礎を持ちあげてしまい、傾いたり基礎が割れたりする原因になります。そこで寒冷地では凍結深度が定められており、凍結震度より深い場所に基礎を設置する必要があります。

凍結深度が定められている地域では、より深い場所に基礎を設置する必要があるため掘削や残土処理にかかる費用がかさみやすいでしょう。床下全体に基礎を設置するベタ基礎よりも、布基礎の方が寒冷地には適しています。

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まとめ

布基礎は建物の構造部分のみに基礎を設置する工法で、コスト面で優位税があります。一方で床下全体に基礎を設置するベタ基礎は、耐震性や湿気対策に優れています。しかし、ベタ基礎の施工に慣れている業者も多いため、実は30坪程度の建物であれば大きな価格差はありません。

価格差がないのであればベタ基礎の方がメリットは多いように感じますが、寒冷地では布基礎の方がよいでしょう。また構造部分に重さが集中する鉄骨の場合も、布基礎の方がよいこともあります。建物の構造や地域特性なども踏まえて判断して、理想のマイホームを叶えましょう。

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この記事の編集者

「家づくりのとびら」編集部

NTTデータグループが運営する注文住宅相談サービス「家づくりのとびら」編集部です。難しい住まいづくりの情報を、わかりやすく正確にお伝えします。記事は不動産鑑定士や宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修記事がメイン。初めての住まいづくりをサポートします!

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