【相談実録】自作の間取り図をもとに注文住宅を建てたいのですが、できますか?

近い将来「家を建てたい」と考えてはいるものの、「いつ、何から手を付けていいかわからない」という人は多いのではないでしょうか。
人生で幾度とないマイホームの建築、購入は、後悔することのないように進めたいもの。
この記事では、初めて家を建てる人からの実際の相談事例にもとづいて、注文住宅を建てる際の全体的な流れや費用の立て方を紹介します。
※実際の相談内容を参考に編集しています。
※本記事に使用しているご相談者様写真および物件画像はイメージです。

相談者

相談者:小泉様 イメージ
小泉様
千葉県市川市在住 50代。遠隔地にある実家が老朽化。面している道路の拡幅工事を機に敷地内にある離れを建て替え、母屋で暮らしている実母に移ってもらおうと計画。希望する間取りの図面は自身で作成済み。

回答者

回答者 家づくりのとびら アドバイザー 守田
家づくりのとびら アドバイザー 守田
注文住宅業界で10年以上勤務し、ハウスメーカーの営業職や工務店向けのコンサルを経験。ハウスメーカーだけでなく、地場の工務店や設計事務所との家づくりにも精通した住宅のスペシャリスト。現在は年間約300件の相談に対応。

注文住宅の相談窓口について比較したい方は、こちらの記事もご覧ください。

1.希望の間取りを作ってみましたが、これで家は建てられますか?

アドバイザー 守田:まず、そちらをお見せいただけますか?

小泉様:はい。画面を共有します。



アドバイザー 守田:今回お考えなのが、離れの建て替えということですよね。

小泉様: そうです。50年くらい前に建てたプレハブです。
2~3年後に脇にある道路の拡幅工事があるので、母屋を半分くらい削らなければならず、これを機に離れを建て替えて、現在母屋に1人で住んでいる母をそこに移転させたいという事情があります。
あと、私と妻がこの1年のうちに母が住んでいる地方に引っ越そうと考えておりまして、一時的に新しく建てる離れの方に身を寄せたいと考えています。
ちなみに、離れはこれまで借家として貸していたのですが、現在は退去済みです。

アドバイザー 守田:新しく家を建てるにあたっての希望や条件はありますか?

小泉様:「後々処分しやすい家にしたい」「ここに母親に移ってもらいたい」「2階を納屋代わりにしてそこに母屋にある荷物を移動させたい」といったあたりですかね。

アドバイザー 守田:2階部分は基本的に収納スペースということですね。

小泉様:一部分は吹き抜けにしたいと思っています。

アドバイザー 守田:図面をみると作りとしては2LDK+S(ストレージ)になりますね。
性能面での希望はありますか?

小泉様:オール電化で太陽光パネルを設けて、蓄電ユニットを入れて、ランニングコストがかからないようにしたいというのがひとつ。
あとは、メーカーと相談になると思いますが、屋根と外壁には断熱性を考えてガルバリウム鋼板を使いたいと思っています。

アドバイザー 守田:ガルバリウム鋼板は断熱性能というよりも耐久性に優れた建材ですね。

小泉様:えっ… そうなんですね。断熱性がいい建材と思っていました…。
この図面で進めていいかどうか、専門の方からの意見が欲しいのですが、どうですか?

アドバイザー 守田:そうですね、基本的には土地ありきなので、まず現地調査は必要ですね…ただ、今回はできる限り理想的な家の形がはっきりできるよう、お話しさせていただきますね。

小泉様:いずれかのタイミングで、住宅メーカーに現地をみてもらう必要があるということですね。なるほど、分かりました。

2.断熱性能の高い家がいいのですが、断熱材によって差はありますか?

アドバイザー 守田:先ほど断熱性能を高くしてランニングコストを抑えたいというご要望がありましたが、ZEH基準くらいは欲しいということでしょうか?

小泉様:そうですね。
最近は標準でも断熱性能は高くなっているのでしょうか?

アドバイザー 守田:昭和に建てた家に比べれば、どこで建てても断然よくなっています。
ただし、仕様によって性能の差があり、それが光熱費に反映されますね。

小泉様:いまの断熱材は吹付がメインなんですか?

アドバイザー 守田:いやまだまだグラスウールが主流ですよ。

小泉様:どっちがいいんでしょうか?

アドバイザー 守田:一長一短なので、何を求めるかで変わってきますね。
吹付だと気密性は取りやすいですが、施工が有資格者でないとできないし、材料も高いので工事費が高コストになります。また、20年間で1割近く収縮してしまいますね。
その点グラスウールは劣化が少ないですが、みっちり入れることはできないので、断熱ムラが出てきますし、機密性は吹付には及ばないですね。

断熱材種類

参考先:断熱材ってどんなもの?繊維系と発泡プラスチック系の比較

単純に断熱の数値「UA値」でみると、一番いいのがボード系なんですよ。
なかでもフェノールフォームですね。ただコストも高いですし、現場で加工する手間もありますし、ちょっと小さく切らないと入らないので、その部分で断熱ムラが出てしまいますね。

小泉様:施工次第で断熱性能は変わってくるということですか?

アドバイザー 守田:施工というよりも仕様の違いですね。
たとえばサッシだとハイクラスのメーカーの場合、標準で外側は日光による劣化に強いアルミを、内側は断熱性の高い樹脂を使っています。

小泉様:なるほど。

アドバイザー 守田:あと断熱材のグラスウールですが、壁の中に入ってさえいれば法令違反ではないんですよ。本当はみっちみちに入れたいところですよね。
この点は技術というよりはチェック体制、施工管理の問題です。外にボードなどを貼ってしまえば隠蔽できちゃいますよね。
なかには、断熱材を入れた写真を撮って現場監督が確認しないと先の工程に進めないという施工管理がしっかりしているところもあります。
ただチェックポイントが多いほど、手間が増えるのでコストはかさみます。現場にカメラが付いていて、24時間お客さんがチェックできる会社もありますが、その分だけコストは高くなります。

小泉様:断熱性能はコスト次第ということですね。

3.できるだけ初期費用を抑えたいのですが、いい方法はありますか?

アドバイザー 守田:予算としては、総額1,500万円でご入力いただいていますが。

小泉様:いまその値段では厳しくなってきているとは思いますけれど…。

アドバイザー 守田:吹き抜けを多くとっているので床は少ないんですが、内部足場を組まないと作業できなくなりそうなので、床面積以上に施工面積が増えると思いますね。
そのほかに、既存家屋の解体の費用も100万前後考えなくてはいけませんね。

小泉様:そのような費用は、1,500万円外で考えていました!

アドバイザー 守田:あと、建物本体工事のほかに付帯工事も入ってきますね。インフラの引き込みなおしや、場合によっては土地改良工事もあるかと思います。
正確なことは申し上げられませんが、付帯工事で400万円程度はかかってくるので、1,500万円で考えると残りが1,100万円。税抜きだとちょうど1,000万円。
この施工面積にあてはめて坪単価にすると、40万円というところですね。

小泉様:最低レベルですよね…。

アドバイザー 守田:仕様の要求水準によりますが、太陽光パネルを載せて蓄電池も使うとなると、もう少しお金が必要になりますね。

小泉様:ずいぶん安く言っている自覚はあります…。

アドバイザー 守田:諸費用は登記と許認可の申請費用で100万くらいはかかってきそうですね。
解体の部分と申請の部分を含めてトータルで1,700万円くらいになるかと思います。
ちなみに多少は足が出ても問題はないでしょうか?

小泉様:多少は足が出てもいいと思っています。
値段フィックスで進めようとすると話にならないという可能性もあると思うので。
ZEHの補助金というのもあったと思うのですが、いくらくらいもらえるんでしたっけ?

アドバイザー 守田:通常だと105万円ですね。
等級5が取れて、かつ、太陽光パネルと蓄電池の設置まで必要ですね。
断熱だけでなくエネルギー消費量の証明も必要なので、エコキュートを入れたり、換気も第1種を入れたりしないといけないですね。

小泉様:補助金の申請手続きは誰がするんですか?

アドバイザー 守田:住宅メーカーの方でやってくれますよ。

小泉様:そうなんですね。 家を建てたけれど申請が通らなかったというケースはあるんですか?

アドバイザー 守田:どのタイミングで相談するかによりますが、一度取れるということで住宅メーカーがプランを出してきているのであれば、取れないということはありません。
今回の図面だと、さほどハードルは高くないと思います。

小泉様:そうですか。

アドバイザー 守田:あと、住宅メーカーによっては太陽光パネルを購入ではなくリースにするという方法もとれます。初期費用を抑えて、あとで使用料を払う形でコントロールできるので検討してみてもいいですね。

小泉様:それはいいですね!
ありがとうございます。

4.依頼する住宅メーカーはどうやって決めればいいですか?

アドバイザー 守田:まずは取捨選択ですね。
提案をしてほしい会社なのか、そこまでは至らない会社なのか。今回は特に大事なのがコストですし、予算内でどれくらいまで対応してもらえるかの仕様の面もあります。
そのほかにも担当者との相性もあると思いますので、一度そのあたりをチェックしてさらに進めるかどうかを判断するといいでしょう。
また、今回は法務局と役所の調査も必要になると思うので、その調査をしてもらったうえで出てきたプランをみて、工事以外の費用も含めた総額で検討するのがいいと思います。

小泉様:なるほど。分かりました。
ただ、現地が遠くてなかなか頻繁に足を運べないのですが。

アドバイザー 守田:遠隔地のメーカーであれば、先ほどのご自分でつくられた図面を事前に送っておいて、オンラインで打合せしてみてはいかがでしょうか。

小泉様:そうですね。
希望する条件の一覧をまとめたものも作ってありますので、先にオンラインで面談をしておいて、向こうに行くタイミングに合わせて実際に現地をみていただけるように進めていきたいと思います。

アドバイスを受けての感想

相談者:小泉様 イメージ

相談者:小泉様の感想

立地や希望する間取りを具体的に知ってもらうために、自分なりにかなり詰めた図面を用意していましたが、実際に現地をみてもらってからの方が安心して進められるということがよく分かりました。
予算については無理があるとは思っていて、場合によっては断熱性能の条件をあきらめなくてはならないかと覚悟していましたが、やり方によっては近い予算でクリアできる方法があると知り、希望が持てました。
WEBでいろいろ調べることはできますが、やはり専門家に聞いてみるのが一番の近道ですね。相談してよかったです。

 

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この記事の編集者

「家づくりのとびら」編集部

NTTデータグループが運営する注文住宅相談サービス「家づくりのとびら」編集部です。難しい住まいづくりの情報を、わかりやすく正確にお伝えします。記事は不動産鑑定士や宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修記事がメイン。初めての住まいづくりをサポートします!

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