斜線制限とは?道路斜線制限をはじめとする基礎知識をわかりやすく解説

斜線制限とは、周囲の土地に関する日照や採光、通風の確保を目的に設定されている制限のことです。主に「道路斜線制限」「北側斜線制限」「日影規制」の3つの種類があり、制限に関わる土地で家を建てる場合、間取りや住宅の形が制限されるため注意しましょう。

この記事では、斜線制限について以下の点を紹介します。

この記事でわかること

  • 斜線制限の基礎知識
  • 斜線制限の緩和ルール
  • 斜線制限をふまえた住宅建設のポイント

ぜひ最後までご覧いただき、住宅建設の参考にしてください。

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1.4種類の斜線制限の違い

斜線制限には主に「道路斜線制限」「北側斜線制限」「日影規制」の3種類と、戸建て住宅ではほぼ当てはまることはない「隣地斜線制限」が存在します。それぞれの制限の内容を理解し、家を建てる土地の特徴などを法律の面で把握しておくことで、建てられる家の間取りのイメージがよりつくようになります。
ここで全種類をまずおさらいしておきましょう。

1-1.戸建てでは対象外になることが多い:隣地斜線制限


隣地斜線制限は、隣の敷地に建つ建物の通風や採光を確保し、良好な環境を保つことを目的とした制限です。隣地境界線(隣の敷地に建つ建物との境界線)を基準に引かれる「隣地斜線」によって建物の高さが制限されます。建物を建てる際は、この隣地斜線を超えないようにしなくてはなりません。

隣地斜線は、具体的には隣地境界線から20m、または31m上がった地点から既定の勾配で斜線を引いて決定されます。そのため、高さが20mまたは31mを超える建物に関する制限であり、一般的な注文住宅では基本的に適用されないことがほとんどです。

また、小さなお店や小中学校などがあるような第一種低層住居専用地域および第二種低層住居専用地域に該当する建物は、建物の高さが10mまたは12mに制限されているため、隣地斜線制限は適用されません。

斜線制限には、隣地斜線制限のほかに「道路斜線制限」と「北側斜線制限」があり、厳密には斜線制限ではありませんが、建築物の高さの制限として「日影規制」も存在します。詳しくは後述しますが、各制限には緩和ルールも設けられているため、ここからは各制限の基礎知識や緩和ルールについて詳しく見ていきましょう。

1-2.採光や通風の確保を目的とする:道路斜線制限


道路斜線制限は、道路の採光や通風の確保を目的とした制限です。道路に面した建物の高さを制限することで道路の採光や通風を確保します。道路の採光や通風を確保すれば、周辺の建物の採光や通風も確保可能です。

道路斜線制限では、建物が「道路斜線」に収まらなくてはなりません。道路斜線は、建物に面した道路の反対側の境界線から、それぞれの土地が属している地域のルールに従い、既定の勾配で斜線を引いて決定されます。

敷地が角地の場合は、それぞれの道路から斜線制限を受けます。また、道路斜線制限には適用距離があり、適用距離を超えていれば建物の高さは制限されません。適用距離は用途地域や容積率(敷地に対する延床面積の割合)によって異なり、20m~50mの範囲で定められています。

なお、道路斜線制限はどのような用途地域でも適用されるため、マイホームを建てる際に少なからず影響が及ぶことを理解しておきましょう

1-3.南からの日当たりの確保を目的とする:北側斜線制限


北側斜線制限は、北側敷地にある建物の南からの日照を確保するための制限です。北側の隣地境界線を基準に、一定の高さから既定の勾配で斜線を引き、その線を超えないように建物を建てる必要があります。

北側斜線の起点の高さは、第一種・第二種低層住居専用地域なら5m、第一種・第二種中高層住居専用地域なら10mです。勾配は用途地域を問わず1.25となっており、基本的にこれら4つの用途地域以外では、北側斜線制限は適用されません。

1-4.日照を確保することを目的とする:日影規制


日影規制は、建築基準法で定められている建物の高さに関する制限です。冬至の日を基準に、周囲の建物の日照を確保することを目的としています。具体的には、冬至の日の午前8時から午後4時(北海道は午前9時から午後3時)までの間、建物によって周囲の日照が妨げられないように建物の高さを制限しなくてはなりません。

適用される用途地域は、軒高が7mを超える、または地上3階建ての第一種・第二種低層住居専用地域、もしくは建築物の高さが10mを超えるその他の用途地域です。

日影規制は「3h-2h/1.5m」のような形で表記されています。「3h」は敷地境界から5m~10mまでの範囲の許容時間、「2h」は敷地境界線から10m超の範囲の許容時間、「1.5m」は測定水平面(日影を測定する地面からの高さ)です。

そのため、「3h-2h/1.5m」の場合は測定水平面から1.5mの高さで日影を測定し、日影になる時間を敷地境界から5m~10mまでの範囲は3時間以内、敷地境界線から10m超の範囲は2時間以内に制限する必要があります。

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2.道路斜線制限の主な緩和ルール

ここからは、採光や通風の確保を目的とする道路斜線制限の主な緩和ルールについて見ていきます。道路斜線制限の主な緩和ルールは以下の4つです。

  • 高低差緩和
  • セットバックによる緩和
  • 公園による緩和
  • 天空率による緩和

それぞれ詳しく解説します。

2-1.高低差緩和

道路が敷地よりも1m以上低い場合に適用されます。道路が敷地よりも低い場合、緩和が適用されないと建築可能な高さが低くなってしまうためです。具体的には「高低差から1を引き、2分の1にした数値分」が緩和されます。

たとえば、道路が敷地よりも1.5m低かった場合は、(1.5-1)÷ 2 = 0.25mです。この計算式で算出された0.25m分、道路が実際よりも高い位置にあるとみなされます。緩和が適用されると道路斜線の起点が高くなるため、建物の高さの上限を引き上げることが可能です。

2-2.セットバックによる緩和

建物に面した道路から、セットバック(後退)させて建物を建てた場合に適用される緩和ルールです。セットバックした距離の分だけ、道路斜線の起点を外側に移動させられます。

起点が本来の位置よりも遠くなれば道路斜線がより高い位置になるため、結果的に建物の高さを本来の規定よりも高くすることが可能です。制限によって3階建ての建物が建てられない場合でも、建物をセットバックさせれば建築が可能になるケースは少なくありません。

ただし、セットバックした距離は建物の外壁ではなく、建物が最も出っ張っている部分から算出されます。そのため、屋根の軒やバルコニーがある住宅は、思ったほど緩和されない場合があるでしょう。

なお、物置や車庫などは特定の条件を満たしていれば緩和に影響しません。同様に、門や塀なども条件を満たしていればセットバックした距離の算出から除外されます。

軒高や面積の合計などが特定の条件に該当するため、条件を満たしているかあらかじめ確認するとよいでしょう。また、行政によっては、緩和を申請する際に門や塀などに関して誓約書の提出を求められる場合もあります。

2-3.公園による緩和

公園や川の水面などが建物に面した道路の反対側にある場合に、適用される緩和ルールです。具体的には、公園や川の水面の反対側の境界線が、建物に面した道路の反対側の境界線として扱われます。

なお、公園による緩和が適用されるのは、「都市公園法にもとづく公園・緑地」または「公共団体が所有・管理する公開広場」です。そのため、公園であれば必ず適用されるというわけではないため注意しましょう。

2-4.天空率による緩和

天空率とは、魚眼レンズで空を見上げた際に、円の面積に対して空が占める割合を示したものです。道路斜線制限を満たしたうえで建てられる最大サイズの建物を「適合建築物」と定義し、建物に面した道路の反対側に測定ポイントを設定して天空率を算出します。

建築しようとしている建物が道路斜線に収まっていなかったとしても、適合建築物より天空率が大きければ建設可能です。

なお、測定ポイントは道路の幅の2分の1以下で等間隔に配置し、すべての測定ポイントで建築しようとしている建物の天空率が適合建築物を超えている必要があります。加えて、幅が違う道路が2つ以上接している場合は、道路ごとに領域を分けて天空率を算出しなくてはなりません。

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3.北側斜線制限の主な緩和ルール

南からの日当たりの確保を目的とする、北側斜線制限の主な緩和ルールは以下の4つです。

  • 道路緩和
  • 水面緩和
  • 高低差緩和
  • 天空率による緩和

各緩和ルールごとに詳しく解説します。

3-1.道路緩和

敷地の北側に道路がある場合、道路の反対側の境界線が北側斜線の起点になります。起点が本来の位置よりも遠くなることで、その分だけ建物を高くすることが可能です。

なお、道路斜線制限と北側斜線の道路緩和は、より厳しいほうが適用されます。大抵の場合は道路斜線制限のほうが厳しくなるため、敷地の北側に道路がある場合は基本的に道路斜線制限が適用されるでしょう。

3-2.水面緩和

敷地が水面や線路敷に接する場合は水面緩和が適用され、水面や線路敷の幅の2分の1だけ北側斜線の起点が延ばされます。道路斜線制限の公園による緩和のように水面や線路敷が条件となっていますが、こちらは公園や広場は緩和の条件に含まれていません。

また、水面緩和が適用された場合、北側斜線の起点の高さは水面からではなく、自分の敷地から一定の高さをとります。

3-3.高低差緩和

高低差緩和は、北側の隣地が自分の敷地より1m以上高い場合に適用されます。北側の隣地が自分の敷地より1m以上高い場合、北側の隣地に与える日当たりの影響が軽減されるためです。

高低差緩和の計算は、道路斜線制限の高低差緩和と同じく、「高低差から1を引き、2分の1にした数値分」の高さを加えた位置に地盤面があるとみなして、北側斜線を設定します。

3-4.天空率による緩和

道路斜線制限と同じく、北側斜線制限にも天空率による緩和が存在します。適合建築物と建築しようとしている建物の天空率を比較し、適合建築物より天空率が大きければ北側斜線を超えていても建設可能です。

北側斜線制限の測定ポイントは、用途地域によって異なります。第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域なら、真北へ4mの位置にラインを引き、ライン上に1m以内で等間隔に測定ポイントを設定しなければなりません。

第一種中高層住居専用地域や第二種中高層住居専用地域なら、真北へ8mの位置にラインを引き、2m以内で等間隔に測定ポイントを設定します。すべての測定ポイントで天空率をクリアする必要があるため、適用条件はやや厳しめといえるでしょう。

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4.日影規制の緩和ルール

日照を確保することを目的とする、日影規制の緩和ルールは以下の3つです。

  • 道路・水面緩和
  • 高低差緩和
  • 塔屋の緩和

それぞれ詳しく解説します。

4-1.道路・水面緩和

敷地が道路や水面、線路敷に接している場合は道路・水面緩和が適用され、道路や水面、線路敷の幅の2分の1だけ敷地境界線が延ばされます。道路や水面、線路敷の幅が10mを超える場合は、敷地から見て反対側の境界線から5m敷地寄りのラインを敷地境界線とみなして測定線を設定可能です。

なお、北側斜線制限の水面緩和と同じく、公園や広場は緩和の条件に含まれていません。

4-2.高低差緩和

隣地が自分の敷地より1m以上高い場合に適用されます。自分の敷地が隣地より低かった場合、建物の影が隣地に影響を及ぼす可能性が低いためです。

高低差緩和の計算は、道路斜線制限や北側斜線制限と同じく、「高低差から1を引き、2分の1にした数値分」の高さを加えた位置に地盤面があるとみなして、日影規制を設定します。

4-3.塔屋の緩和

第一種・第二種低層住居専用地域や田園住居地域以外の用途地域では、基本的に屋上の塔屋は建物の高さに含まれません。ただし、塔屋以外の部分で建物の高さが10mを超えている、または塔屋の水平投影面積の合計が建物の建築面積の8分の1を超えている場合は制限を受けてしまいます。

なお、水平投影面積は建物を真上から見たときの面積であり、床面積とは異なるため注意しましょう。

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5.斜線制限をふまえた住宅建設のポイント

注文住宅を設計するのはあくまでも設計士ですが、建物には斜線制限が存在することや斜線制限の高さの上限を知っておくことは大切です。斜線制限に関する基本的な知識があることで、ハウスメーカーや工務店側でもし土地のルールを理由とした間取り・構造の提示がなされた際、理解が進み円滑に家づくりが進みます。

また、斜線制限をクリアしつつ快適に暮らせる注文住宅を建てるには、ハウスメーカーの腕に依存する部分が大きいです。そのため、斜線制限をふまえて注文住宅を建てる場合は、斜線制限に強いハウスメーカーを選ぶとよいでしょう。ここからは、斜線制限に強いハウスメーカーを3社紹介します

5-1.ミサワホーム

ミサワホームの住宅は、大収納空間「蔵」を好きなフロアの好きな位置に設けられるため、斜線制限をクリアしつつ十分なスペースを確保できます。屋根の桁落としによって斜線制限に対応した注文住宅の建築実績もあるため、信頼できるハウスメーカーです。

5-2.パナソニックホームズ

パナソニックホームズの住宅は、敷地や空間を有効活用できる「マルチモジュールシステム」を採用しています。天井高は240cmを基準に4タイプ用意されており、勾配架構によって複雑な斜線制限も対応可能です。

横方向にも15cm単位で空間を広げることができ、2階部分のみせり出すことも可能なため、敷地が狭い場合でも駐車場上スペースを有効活用できます。

5-3.へーベルハウス(旭化成ホームズ)

旭化成ホームズは、進化した躯体構造を生かした新・重鉄3階ヘーベルハウス「フレックス・monado」の建築実績があります。密集地帯の厳しい斜線制限でも、さまざまな斜線対応システムによって最大限の空間を確保可能です。駐車場上の余ったスペースを2階室内に取り込めば、天井の高いリビングも実現できます。

重鉄構造は耐震性や耐火性に優れているため、万が一の際、密集地でも優れた性能を発揮できるでしょう。

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まとめ

斜線制限は、日照や採光、通風を確保するために定められた制限です。とくに道路斜線制限と北側斜線制限は注文住宅に適用される制限のため、注文住宅を建てる際は日影規制とあわせて理解しておきましょう。

また、斜線制限を受けそうな土地に注文住宅を建てる場合は、斜線制限に強いハウスメーカーがおすすめです。斜線制限に強いハウスメーカーであれば、斜線制限を満たしたうえで理想的な注文住宅を実現できるでしょう。

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この記事の編集者

「家づくりのとびら」編集部

NTTデータグループが運営する注文住宅相談サービス「家づくりのとびら」編集部です。難しい住まいづくりの情報を、わかりやすく正確にお伝えします。記事は不動産鑑定士や宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修記事がメイン。初めての住まいづくりをサポートします!

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