- 変更日:
- 2025.04.11

「ペア連生団信」は、夫婦のどちらかが死亡・高度障害になった場合に、残りのローンが全額保障される仕組みです。共働き世帯が一般的になってきた近年、住宅ローンを組む際に夫婦がお互いの万一の事態に備えられる仕組みとして、ペア連生団信の活用が注目されるようになりました。ペア連生団信によって、不測の事態に備えられ、もしものときに家計の負担を大幅に軽減できます。
この記事でわかること
- ペア連生団信の仕組み
- ペア連生団信と従来の団信の違い
- ペア連生団信のメリット・デメリット
- ペア連生団信に向いている世帯・向いていない世帯
夫婦で住宅ローンを借り入れたい方は、ぜひ参考にしてください。
住宅ローンについてプロに相談をしたい方は、こちらの記事もご覧ください。
目次
1.ペア連生団信(夫婦連生団信)とは
「ペア連生団信」とは、ペアローンや連帯債務型の住宅ローンについて、ペアのうち1人に万が一のことがあった場合に、ローン残高がゼロになる保険のことです。「連生団信」「夫婦連生団信」も、ペア連生団信と同様のものを指します。
上記のペアとは、夫婦や親子などが該当します。同性のパートナーや内縁者、婚約者同士で加入できるものもあります。
そもそもペア連生団信とは、フラット35を提供する住宅金融支援機構の商品名です。一方で、住宅支援機構以外にも同様の保険商品を提供する会社があります。
本記事では同様の保険を「ペア連生団信」とまとめ、ペアが夫婦であることを想定して扱います。
1-1.ペア連生団信の仕組み
ペア連生団信に加入している場合、夫婦のどちらかが死亡または高度障害となれば、住宅ローン残高が0円となります。返済残高は生命保険会社が支払うため、残された家族が返済する必要はありません。
ペア連生団信では、月々の返済に金利を上乗せすることで保険料を支払います。夫婦の一方にもしものことがあった場合、保険金は家族に支払われるのでなく、ローン会社に支払われることで残高が返済されます。
このため、ローン会社とペア連生団信の引受会社は異なることが一般的です。
1-2.ペア連生団信の基本的な加入要件
ペア連生団信への加入について定められている要件は、次の内容があります。
ペア連生団信の基本的な加入要件
- 加入できる年齢の範囲
- 保障期間
- 幹事生命保険会社による加入承諾
加入要件は保険会社によって異なります。詳しくはペア連生団信を取り扱う保険会社やローン会社に確認しましょう。
1-3.連生団信と通常の団信の違い
従来の団信では、夫婦の一方が死亡した際は、死亡した者の住宅ローン残高のみがゼロとなります。連帯債務型では問題ありませんが、ペアローンでは残された方の残高はそのまま残ります。
例えば、夫婦でペアローンを組んでいる場合に従来の団信に加入している場合を考えましょう。夫が死亡した場合は、夫の残高の返済は免除されますが、妻の分は引き続き返済する必要があります。ペアローンでは、万が一家庭が一馬力となった場合を考えると不安が残る形でした。
しかし、ペア連生団信に加入しておけば、夫が死亡したときに2人の残高全額が弁済されます。死亡した本人だけでなく、もう一方の返済残高もなくなります。
ペア連生団信と従来の団信の主な違いは次の通りです。
ペア連生団信 | 通常の団信 | |
---|---|---|
契約者 | 2人 | 1人ずつ |
加入できる ローンの種類 | 連帯債務型・ ペアローン | ペアローン・ 連帯債務型・ 連帯保証型 |
万一の際の保障 | 死亡した方・ 残された方の 残高を含めた全額 | 死亡した方の ローン残高のみ |
上乗せ金利 | 通常よりも高い | ペア連生団信 より低い |
2.ペア連生団信のメリット
ペア連生団信に加入するメリットには、経済的なリスクを回避できることや、ほかの方法に比べて少ない費用で備えられることがあります。
近年はペアローンでも加入できるペア連生団信も登場したため、ペアローンのメリットも広まりやすくなりました。
以下では、それぞれのメリットを詳しく解説します。
2-1.死亡・高度障害・働けない状況などに備えられる
ペア連生団信に加入することで、夫婦のどちらかが万が一の事態になった場合の備えができます。
負担割合や残高にかかわらず、2人のローンが0円となるため、残された家族が住宅ローンの返済をする必要はありません。
夫婦の一方が死亡したり働けなくなったりすると、収入が減少するだけでなく、家事や子育てを1人で担うことになります。1人分とはいえ、ローンを支払いながら生活を回すのは大変です。
1人で家庭を支えるなかで、それまでの収入を維持できなくなったり、他の支払いがローンの返済を圧迫したりすることも考えられます。
ペア連生団信に加入することで、上記のリスクを避けられるでしょう。
2-2.生命保険よりも費用を抑えて不測の事態に備えられる可能性がある
返済額に金利を上乗せして加入するペア連生団信は、夫婦の一方が死亡した場合の返済を生命保険でカバーするよりも費用を抑えられる場合があります。
生命保険では、年齢が上がるごとに保険料も上がることが一般的です。一方、ペア連生団信は年齢にかかわらず一定の金利を上乗せして支払います。
どちらのほうが費用を抑えられるかは、条件によって異なります。それぞれの保障内容や金額を比較して検討し、万が一の事態に賢く備えましょう。
2-3.借入額の高いペアローンを利用しやすい
ペア連生団信への加入によって、ペアローンを利用するハードルが下がります。
ペアローンは夫婦それぞれがローンを契約するため、1世帯で2本のローンを返済します。このとき、夫婦それぞれが従来の団信に加入しても、一方に万一のことがあった場合には、残された家族はローンの返済を続けなければなりません。
この対策として、ペア連生団信に加入できる連帯債務型のローンを組むことがありました。連帯債務型であれば、夫婦のどちらか一方に万一のことがあったとしても、ローンが全額弁済されます。
不測の事態を考えると1本のローンのほうが安心であり、ペアローンには大きなリスクが残る状態でした。
しかし、近年はペアローンでも加入でき、万一の事態に2人のローン残高が弁済されるタイプのペア連生団信が登場しました。これにより、ペアローンを契約する不安が緩和されてきています。
ペアローンのメリットは、単独ローンに比べて借入額を増やせる可能性が高いことです。ペアローンで借入額を増やすか、単独ローンで不測の事態に備えるかを天秤にかけて考える必要が薄まったことで、よりペアローンが使いやすくなりました。
3.ペア連生団信のデメリット
もしものときに備えられるペア連生団信には、デメリットもあります。経済的な負担の増加や選択肢の少なさが主です。
ローンが全額弁済されたときに、所得税が課税されるリスクもゼロではありません。
以下では、ペア連生団信のこうしたデメリットについて詳しくみていきましょう。
3-1.ローン返済額に保険料分の金利を上乗せして支払う必要がある
ペア連生団信に加入するには、ローンに金利を上乗せして支払わなければなりません。
上乗せ金利の利率は金融機関によって異なるものの、年利で0.1~0.3%がプラスされます。借入金額や返済年数にもよりますが、月々の返済額が数千円増えてしまいます。
月に数千円と聞くと、大したしたことはないと考える方もいるかもしれません。しかし、住宅ローンは長期間支払うことが一般的です。
例えば、支払いが月に1,000円増えると、1年で12,000円、35年だと420,000円多く支払うことになります。支払総額でみると、金額に大きく差が出ることがわかるでしょう。
3-2.利用できる住宅ローンの選択肢が少ない
ペア連生団信を取り扱う住宅ローンは多くありません。ペアローンを取り扱っていても、ペア連生団信の提供がない銀行もあります。ペアローンでペア連生団信に加入したい場合は、事前によく確認しましょう。
ペアローンでペア連生団信に加入することを考えるよりも、単独ローンの連帯債務型でペア連生団信に加入することを考えるほうが、ローンの選択肢は多い傾向にあります。
3-3.所得税が課税される可能性がある
夫婦の一方に万一のことがあった場合、ペア連生団信によってもう一方のローンが弁済されることで、所得税が課せられる場合もあります。
これは、返済義務がなくなったことが経済的な利益とみなされ、一時所得として取り扱われる可能性があるためです。
ローンの弁済に使われる金額は、保険会社からローンを取り扱う銀行に直接支払われます。残された家族のもとに金銭が入るわけではありません。したがって、税務署による厳しい取り立てはないと考えられるものの、一時所得にならないと法律で定められているわけでもありません。
返済義務がなくなったときに、所得税がどのようになるかはケースバイケースです。心配な場合は税務署や税理士に確認するとよいでしょう。
4.ペア連生団信に向いている・向いていない世帯の特徴
ペアローンで加入できるペア連生団信は、もしものときの備えとして心強い制度です。
加入するかどうかは自由に決められますが、住宅ローンの新規契約や借り換えのタイミングでしか加入できません。
以下では、ペアローンを考えている世帯について、ペア連生団信が向いている・向いていない場合の特徴を紹介します。自分の世帯と照らし合わせて、ペア連生団信を検討しましょう。
4-1.ペア連生団信に向いている世帯の特徴
ペアローンを組む際に、ペア連生団信への加入をおすすめする世帯は以下の通りです。
ペア連生団信の加入に向いている世帯
- 金利の上乗せに対応できる金銭的余裕がある
- 万一の事態が起こったときに貯蓄に不安がある
ペア連生団信に加入するには、月々の返済額に上乗せして支払いをしなければなりません。ローンの返済額を増やしても金銭的な余裕がある場合は、無理なく万一の事態に備えられます。
夫婦の一方が死亡したり働けなくなったりしたときの金銭的な不安がある場合も、ペア連生団信への加入がおすすめです。
現在は家事や子育てを2人で分担していても、1人に万一のことがあればすべてをもう1人がこなさなければなりません。手が足りず、家事を外注したり新たな生活必要品などを購入して対応したりすることも考えられます。
こうした場合にローンの返済が生活を圧迫しないよう、2人分のローンが全額免除となるペア連生団信に加入しておくと安心です。
4-2.ペア連生団信に向いていない世帯の特徴
ペアローンを組む際に、ペア連生団信への加入をおすすめしない世帯は以下の通りです。
ペア連生団信の加入に向いていない世帯
- ほかの生命保険に加入している
- 月々の返済額を少しでも抑えたい
ペア連生団信は、生命保険の1つです。ほかの生命保険で十分な保障があれば、ペア連生団信に入る必要性は薄いでしょう。
ただし、ペア連生団信に加入することで上乗せされる金額は、生命保険の保険料よりも抑えられる場合もあります。既存の生命保険に加入し続けるのか、ペア連生団信に切り替えるのかを、住宅ローンを組むタイミングで考えてもよいでしょう。
月々の返済額をできる限り少なく抑えたい場合も、ペア連生団信への加入はおすすめしません。年利で0.1~0.3%が上乗せされるため、加入するペア連生団信や借入額によっては大きな負担となる可能性があります。
5.ペア連生団信以外の共働き夫婦が利用できる住宅ローン
ペアローン以外の住宅ローンには、連帯債務と連帯保証があります。いずれも2人の収入を合算して審査されることで、借入金額が決まります。
2つのタイプについて、以下でみていきましょう。
5-1.連帯債務
連帯債務は、夫婦の一方が主債務者、もう一方が連帯債務者となって2人が返済義務を負うタイプです。
ペア連生団信への加入ができるものであれば、夫婦の一方に万一のことがあった場合、返済残高は全額免除されます。
連帯債務のメリット
- 夫婦ともに住宅ローン控除を受けられる
- 事務手数料や印紙代を抑えられる
連帯債務のデメリット
- 通常の団信にしか対応していない場合がある
返済義務は夫婦2人にあるものの、ローン自体は1本のため、事務手数料や印紙代も1本分で済みます。ペア連生団信の加入要件や保障内容は金融機関によって異なるため、契約前にしっかりと確認しましょう。
5-2.連帯保証
連帯保証は、夫婦の一方が主債務者、もう一方は連帯保証人となるタイプです。
連帯保証のメリット
- 単独ローンと比べると借入額を増やしやすい
連帯保証のデメリット
- ペア連生団信には基本的に加入できない
- 住宅ローン控除は主債務者しか受けられない
連帯保証では、ペア連生団信には入れません。返済が免除されるのは主債務者が死亡した場合のみで、連帯保証人が死亡した場合は返済を続ける必要があります。
1人の収入では希望額の借入ができない場合に、配偶者の収入を加えることで借入額を増やすことを目的として使われるタイプです。
とはいえ、連帯債務と比べるとメリットの少ない方法といえるでしょう。
6.まとめ
ペア連生団信とは一般的に、夫婦の一方が死亡したり高度な障害を抱えたりした際に、住宅ローンが全額免除となる生命保険を指します。
従来のペア連生団信は、収入合算の連帯債務型でしか加入できませんでした。しかし、近年はペアローンでも加入できるペア連生団信が登場しています。
ペア連生団信に加入できるタイミングは、基本的に新規借入か借り換えのときのみです。メリットとデメリット、希望するローンの種類を踏まえて、加入すべきかどうかを慎重に検討しましょう。
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