- 変更日:
- 2025.11.26

親子で住む注文住宅や二世帯住宅を検討中で「もう少しローンで借りる金額を増やせたら…」と考えている方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、借入額を増やすと審査通過が厳しくなるだけでなく、毎月の返済負担も増えてしまう点も悩ましいものです。
そのようなときは、親子で返済できる「親子ペアローン」の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
親子ペアローンを組めば、借入額を増やせるだけでなく、毎月の返済負担も軽減できる可能性があります。
親子ペアローンに向いている人
- 高額の住宅ローンを借りたい人
- 親子ともに生命保険に加入したい人
この記事では、親子ペアローンについて次の情報を紹介します。
この記事でわかること
- 親子で組む3つのローンの比較
- 親子ペアローンのメリットとデメリット
- 親子ペアローンで後悔しないためのチェックポイント
親子ペアローンの理解を深め、親子ともに納得のいくローンを組んでくださいね。

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柴田 充輝
FP1級技能士・社会保険労務士・行政書士・宅建士。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じ、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に1,000記事以上を執筆。
住宅ローンの借り入れ方の種類について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
目次
1.「親子ペアローン」とは?他ローンとの比較
親子ペアローンとは、一定の収入がある親子や夫婦などが、それぞれ契約者となるローンのことです。
なお、親子で組めるローンとしては、ペアローン以外にもリレーローンと収入合算があります。
| 種類 | 団信 | 住宅ローン控除 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 親 | 子 | 親 | 子 | ||
| ペアローン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| リレーローン | ×(※) | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 収入合算 | 連帯保証 | 主債務者のみ | 主債務者のみ | ||
| 連帯債務 | 主債務者のみ | 〇 | 〇 | ||
親子で組む3つのローン比較表
※例外あり。詳細は1‐1で解説。
親子ペアローンは、親子それぞれが契約者となるため、団体信用生命保険(団信)への加入や住宅ローン控除の適用も親子ともに可能です。
ここでは、親子ペアローンと「親子リレーローン」「収入合算」との違いを詳しく紹介します。
1-1.親子リレーローンとの違い
親子ペアローンとの大きな違い
親子が同時に返済しないため、返済期間が長引く傾向にある
親子リレーローンとは、最初に親が返済し、子が残りの返済を引き継ぐ仕組みの住宅ローンです。
親子が同時に返済するわけではなく、ローン契約は1本となります。そのため、ほとんどの親子リレーローンでは、団体信用生命保険に加入できるのは1人のみと定められています。
最終的に返済を引き受けるのは子のため、団信への加入は子に定められることが一般的です。ただし、金融機関によっては、親子どちらでも加入可能なケースもあります。
なお、住宅ローン控除においては、ローンを返済している期間中は、親も子も適用されます。実際に住宅ローン控除を受けられるのは、「持分があり、かつ実際にその物件に居住している人」です。
なお、親子リレーローンについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
1-2.収入合算との違い
親子ペアローンとの大きな違い
返済は基本的に親子どちらかのみなので、金銭的な負担が偏る
収入合算とは、親子の収入を合算して審査を受ける形のローンです。
親子のどちらかが主債務者となり、他方が連帯保証人か連帯債務者となります。ローン返済は主債務者が行うため、ローン契約は1本です。
また、どちらかが連帯保証人となるか、連帯債務者となるかで以下のような違いがあります。
【連帯保証型の場合】
- 団体信用生命保険に加入できるのも、住宅ローン控除が適用されるのも、主債務者のみ
- 主債務者が返済できないときのみ、連帯保証人が返済の義務を負う
【連帯債務型の場合】
- 団体信用生命保険に加入できるのは主債務者のみ
- 双方に住宅ローン控除が適用される
- 主債務者が返済できるかどうかに関わらず、連帯債務者が同等の返済の義務を負う
住宅ローンにはさまざまな組み方があり、金融機関によって取り扱っている商品も異なります。親子の収入状況や年齢、今後のライフプランなどを検討したうえで、自分たちに合った組み方を決めましょう。
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家づくりのとびらコラム
2024年から住宅ローン減税制度が改正されます(2025年も同様の措置を引き続き実施)
住宅ローン控除制度は、2024年より以下のように改正されたため、活用したい方はご注意ください。
借入限度額
子育て世帯・若者夫婦世帯※が2025(令和7)年に入居する場合、以下の水準を維持する。
| 新築住宅の種類 | 借入限度額 |
|---|---|
| 認定住宅 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 |
※18歳以下の子どもがいる、 もしくは夫婦のいずれかが39歳以下の世帯
床面積要件緩和措置の期限
新築住宅の床面積要件を40平米以上に緩和する措置(合計所得金額1,000万円以下の年分)の建築確認の期限を以下のとおり延長する。
2024(令和6)年12月31日 → 2025(令和7)年12月31日
新築住宅の条件
2025年1月以降に建築確認を受けた新築住宅は、省エネ基準を満たす住宅であることを条件とする。
※借入限度額は省エネ性能に応じて異なる
※申請には「省エネ基準以上適合の証明書」が必要
参考:国土交通省「住宅ローン減税」

柴田 充輝
親子ペアローンにおいては、親の年齢と就業状況が重要な要素となります。金融機関は貸し倒れのリスクを回避するために、収入の安定性や今後の収入の見通しを重視するためです。親が50代前半で安定収入がある場合はペアローンが有効ですが、55歳以降では借入期間に制約が生まれるため、月々の返済額が高くなるリスクがあります。
この場合、収入合算やリレーローンのほうが現実的な選択肢となるでしょう。団信加入の実務上の注意点では、ペアローンの場合、親子それぞれが健康状態の審査を受ける必要があります。親の年齢が高い場合や既往症がある場合、団信加入が困難になるケースが考えられます。
事前に金融機関で加入できるかを確認しておきましょう。住宅ローン控除を最適化するためには、親子の所得税額に応じて借入の配分を考えなければなりません。税制メリットだけを見ると、課税所得が多いほうが控除による効果が大きくなります。
2.親子ペアローンのメリット
親子ペアローンには、親子それぞれがローン契約を締結するからこそ得られるメリットがあります。
親子ペアローンのメリット
- 収入額を増やせる
- 親子それぞれが住宅ローン控除を利用できる
- 親が65歳以上でも借りられる
上記3つが、具体的にどのような効果がありメリットとなるのかを紹介します。
2-1.借入額を増やせる
どちらか一方だけが住宅ローンを組む場合と比べ、ローン契約が増える分、借入額も増えます。
借入額が増えれば、マイホームの選択肢が増えます。内装の自由度も高まれば、各世帯のプライバシーを確保しやすい完全分離型の二世帯住宅や、おしゃれな輸入住宅、自然素材の外壁やタイルなども検討できるでしょう。
2-2.親子それぞれが住宅ローン控除を利用できる
資金計画で見落としがちなのは、新居での生活が始まってから必要となるランニングコストです。
親子ペアローンの場合、各自の返済額に応じて住宅ローン控除を利用できます。
そのため、親子ともに所得税や住民税を納付している場合には節税効果が期待できます。
ただし、2024年からは「省エネ基準を満たす住宅」が制度適用の条件に加わっているのでご注意ください。
2-3.親が65歳以上でも借りられる
住宅ローンは、申込み時の年齢が65歳未満である必要がある商品が多い傾向にあります。
しかし、親子ペアローンを選べば、お互いがそれぞれの連帯保証人を務めます。金融機関からすると子の返済能力も評価できるため、申込み時の年齢が満70歳にまで引き上げられる可能性があります。
年齢的に親が単独でローンを組みにくいときや、子だけでは借りたい金額を借りられないときにはメリットが大きいでしょう。
▶理想の条件を押さえた家づくり、最適価格を知る方法(無料)3.親子ペアローンのデメリット
メリットの多い親子ペアローンですが、いくつか注意が必要な点もあります。
親子ペアローンのデメリット
- 返済に行き詰まったときは親子で協力しづらい
- フラット35を利用できない
- 相続が複雑になることがある
- 名義変更や解消が難しい
場合によっては、親子リレーローンや収入合算が適していることもあるので、以下より1つずつチェックしておきましょう。
3-1.返済に行き詰まったときに親子で協力しづらい
親子ペアローンでは、親子それぞれが返済を抱えることになります。
そのため、どちらかが返済に行き詰まっても、他方も返済中のため、援助する余裕がなくなりがちです。
万が一に備えて協力できるようにしたいのであれば、親子リレーローンが適しているでしょう。
リレーローンの場合、返済するのは常に親子のどちらかとなるため、収入が下がったときや急な出費があったときなどは他方に援助を依頼できます。
3-2.フラット35を利用できない
フラット35は、日本政策金融公庫と民間の金融機関が提携して提供する全期間固定型の住宅ローンです。
繰上返済の手数料がかからない、柔軟に返済プランを変更できるなどのメリットがあり、多くの方が利用しています。
しかし、親子ペアローンではフラット35を利用できません(親子リレーローンは可能)。
親子で利用できるフラット35を探している方は、親子リレーローンか収入合算を検討しましょう。
3-3.相続が複雑になることがある
親子ペアローンを組むときは、住宅ローンの返済負担割合に応じて住宅の持分(所有権割合)を設定する必要があります。
返済負担割合と所有権割合が異なるときは、返済負担に比べて所有権割合が少ないほうが他方に贈与をしていることになります。贈与額が基礎控除の110万円を超えている場合、贈与税が発生するため、注意が必要です。
親子ペアローンを組んでいた親が亡くなったときは、住宅のうち、親の持分に対して相続が発生します。
親子ペアローンを組んでいた子以外に子(子にとってのきょうだい)がおり、なおかつ居宅以外に財産がない場合には、親の持分の一部をきょうだいが相続することになります。
とはいえ、居住している住宅の一部だけを現金化するのは現実的ではありません。「代償分割」の形で、きょうだいの相続分を現金で支払う対応が求められるケースが多い傾向にあります。
代償分割とは、特定の相続人が分けにくい財産(建物や土地など)を取得し、他の相続人へ現金を渡して相続分を公平にする方法です。遺産の大半が不動産で占められているとき、利用されます。
特に、相続人が多いときには相続が複雑になり、トラブルに発展するおそれもあるため注意が必要です。
3-4.名義変更や解消が難しい
親子ペアローン返済中、ローン契約者の名義の変更や、連帯保証人・連帯債務者の解消は原則として不可能です。
どうしても契約内容を変更する必要が生じたときは、新しい条件でローン審査を受け直すことが求められます。
住宅ローンは返済期間が長いため、途中で状況が変わることは珍しくありません。
例えば「親と別居したい」「マイホームを別に建てたいので、親子ペアローンを解消したい」といった要望が生じたときは、金融機関に相談し、必要に応じてローン審査を受ける必要があります。
なお、金融機関によっては「契約時と状況が変わったときには一括返済する」というようなペナルティを定めているものもあるので、契約時に確認しておくとよいでしょう。
また、住宅ローンの利用は原則として一世帯に1つのため、親子ペアローンの返済をしつつ、別の住宅ローンは組めません。
このように、親子ペアローンにはメリット・デメリットがあり、どの住宅ローンを組むかを決めるのは難しい判断です。
しかし、家づくりは住宅ローン以外にも決めるべきことが山ほどあり、自分たちだけですべての情報を集め、整理し、決定していくのはとても大変です。
そこでおすすめなのが、無料で使える家づくりのとびらのサポートサービス。
詳細は下記をご覧いただき、ご自身の状況に合わせてご利用ください。二世帯間での話し合いや、難しい資金計画も進みやすくなりますよ!

柴田 充輝
親子ペアローンを活用すると住まいの選択肢が増えるため、理想の住環境を実現しやすくなります。ただし、借入可能額が増えるからといって、安易に上限まで借りないようにしましょう。
親子それぞれの将来収入減少リスクを考慮し、各世帯が単独でも返済可能な範囲に留めるような判断が重要です。
特に、親が役職定年や定年後再雇用になると収入が減少するため、返済困難となるリスクを織り込まなければなりません。フラット35が利用できないため、固定金利での借入を希望している方は、民間金融機関の長期固定金利商品を比較・検討しましょう。
4.親子ペアローンで後悔しないためのチェックポイント

住宅ローンは返済期間が長いため、途中でライフスタイルや家族構成などが変化する可能性があります。
場合によっては返済しにくくなることもあるので、慎重に利用したいところです。
最後に、親子ペアローンで後悔しないよう、チェックポイントとトラブルの回避策を押さえておきましょう。
4-1.原則として同居が前提
金融機関によっては、親子ペアローンを組む条件として「親子が同居すること」が求められることがあります。
親子同居が条件になっている場合は、たとえ親子ペアローンの返済を続けたとしても別居は難しいでしょう。
例えば、別居をするタイミングとしては、以下のようなパターンが挙げられます。
別居が想定されるパターン
- 子の転勤
- お互いに暮らしにくさを感じたとき
- 子が独身で結婚したとき
- 子世帯と親世帯の折り合いが悪いとき
二世帯住宅で暮らしていると、二世帯間・夫婦間であらゆる不満が出てくるケースがあります。
例えば間取り。
浴室や洗面所などの水回りを親子で共有する場合、使いたいときに使えず、不便さを感じることがあります。
キッチンを共有する場合も、「好きな料理が作れない」「食べる時間が合わない」「お皿や食材を好きな場所に置けない」などの不満が溜まるかもしれません。
リビングを共有する場合には、親子どちらかが頻繁に客を呼ぶと、他方はリビングを使用しづらくなることもあるでしょう。
上記のような状況になっても、親子ペアローンを組んでいるときは安易に別居を選べません。
親子の間、夫婦の間でトラブルが生じたり、家族構成が大きく変わったりすることも想定してから親子ペアローンを選ぶようにしましょう。
トラブル回避策
- 同居が継続しやすいような間取りにしておく
- 同居ルールを決めておく(共有設備の使用時間・方法など)
親子ペアローンを組むときは、あらかじめ同居が継続しやすいよう工夫しておくとトラブルを避けやすくなります。
例えば、親子が不必要に生活に干渉しないためにも、各世帯がそれぞれの設備・空間を持てる完全分離型の二世帯住宅にしておくとよいでしょう。
また、同居ルールを決めておくことも大切です。
予算の面で完全分離型の選択が難しい場合は、共有する設備の使用時間や使用方法を決めておくなど、なるべく細かく決めておくとトラブルに発展しづらいでしょう。
二世帯間で間取りについてスムーズな話し合いを行うには、無料のHOME4U 家づくりのとびら プラン作成依頼サービスがおすすめです。
4-2.きょうだいがいる場合は相続トラブルに要注意
次のようなケースでは、親が亡くなったときに親子間、きょうだい間で相続トラブルが生じるケースがあります。
相続トラブルが生じやすいケース
- 被相続人(亡くなった親)の財産が居宅以外にない
- 被相続人の財産がきょうだい間で平等に分けられない
- 同居していないきょうだいが、居宅の権利や土地を相続したいと考えている
相続トラブルが生じると、遺産分割協議がいつまでもまとまらず、さらにきょうだい間の交流が絶えるといった問題に発展するリスクがあります。なるべく避けるためにも、次に紹介する対策を取っておきましょう。
トラブル回避策
- 親子ペアローンを組む前に相続について話し合う
- 相続の分割方法を決めて、遺言などで記載しておく
- 相続に詳しい弁護士などの専門家に相談し、解決策を講じておく
子にきょうだいがいる場合は、親子ペアローンを組む前に相続について決めておきましょう。
親が亡くなったときには、親の持分に対して相続が発生します。場合によっては現金として遺産分割するために、自宅の売却を余儀なくされることもあります。大切なマイホームを守るためにも、事前の話し合いは不可欠です。

柴田 充輝
二世帯住宅を建てた当初は「お互いのプライバシーは守れるだろう」と考えていても、音の問題や来客時のストレスなどを感じる可能性があります。プライバシー確保の課題は残るため、設計段階から防音対策や動線の工夫など、十分な検討が必要です。
子世帯の結婚や出産といったライフイベントが発生すると、別居を検討する可能性が十分に考えられます。「今現在」だけでなく、将来の変化を見据えたうえで、二世帯住宅が本当にベストな選択肢なのかを検討しましょう。金融機関の同居要件の実態として、多くの銀行では住民票での同一住所確認だけでなく、定期的な居住実態調査を行う場合があります。
別居が発覚すると契約違反として一括返済を求められるリスクがあるため、転勤の可能性がある場合は事前に金融機関に相談し、条件変更の柔軟性を確認しておくべきです。親の相続発生時に「争族」にならないためにも、代償分割を見据えた資金の準備が欠かせません。特に不動産以外の資産が少ない場合は、計画的な資産形成が不可欠です。
相続人の数が多いほどトラブルになりやすいため、注意が必要しましょう。生命保険の活用や、親の持分を段階的に子に贈与する計画的贈与なども有効な手段です。
まとめ
親子ペアローンを利用すると、借入額が増え、理想のマイホームを実現できる可能性が広がります。親と返済負担を分けられるので、1人でローンを組むよりも毎月の返済額を抑えやすいのもうれしいポイントでしょう。
しかし、親子ペアローンは原則として同居を前提としたローンです。ライフスタイルや心境の変化によって同居が難しくなったときも、別居に踏み出しにくくなる可能性があります。
親・子ともに満足できる親子ペアローンを組むためにも、少なくともローンを完済するまで同居を続けられるのか慎重に検討しましょう。
同居を続けやすくするために、完全分離型の間取りにしたり、同居ルールを決めたりする工夫も大切です。
また、子にきょうだいがいるときは、相続トラブルに注意してください。
家族全員が幸せになれる家づくりのためにも、親子ペアローンを組む前に同居と相続について話し合っておきましょう。
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この記事の編集者

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